2021 年 30 巻 6 号 p. 438-449
小児とAYA世代の脳腫瘍は手術療法, 放射線治療, 多剤併用抗がん剤を中心とした薬物療法の進歩, ゲノム解析とその情報を基にした分子標的療法の進歩により治療成績が改善し, 脳腫瘍サバイバーが増加した. そして, 脳腫瘍サバイバーの長期フォローアップのデータが蓄積され, 認知機能障害・内分泌機能低下・アピアランスの変化・妊孕性喪失・脳血管障害・二次がんを含めたさまざまな課題・晩期障害が報告された. 後遺障害・晩期障害の低減のために, 脳神経外科医は低侵襲手術を含めた適切な手術アプローチを選択し, 必要な術中の脳機能モニタリングを行い, 最新の疾患知識・診断法・ゲノム医療・陽子線を含めた放射線治療・化学療法・分子標的療法の知識を常にアップデートして, 脳腫瘍患者にとって最適な治療を提供しなければならない. 脳腫瘍サバイバーの晩期障害は多岐にわたるため, チーム医療による長期フォローアップ体制の確立は必須である. 脳腫瘍サバイバーの現状を知ることで, 小児とAYA世代の治療開発に重要な視点をもつことが可能となる.