2022 年 31 巻 4 号 p. 247-252
菌状息肉症 (mycosis fungoides : MF) とは皮膚のT細胞リンパ腫であるが, 腫瘍細胞に対する非特異的な炎症反応により, 全身に多彩な炎症を呈する疾患でもある. 今回, MFの加療中に脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血を発症した1例を経験した. 症例は57歳女性. 2年前からMFに対して分子標的薬投与や局所の放射線治療を繰り返し行っていた. 再治療直前に突然の頭痛と意識障害をきたした. 頭部CT/CTAで前交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血と診断し, 動脈瘤コイル塞栓術を施行した. 術後は症候性脳血管攣縮なく経過したが, 8カ月後にMFの増悪に伴う敗血症により死亡した. 本症例において, MFによる全身性の炎症が脳動脈瘤の破裂に関与した可能性があると推測した.