形容詞と名詞とからなる名詞句の概念表象は,形容詞のスキーマと名詞のスキーマとが結合し,形成される.例えば,典型名詞句“赤いリンゴ”の概念表象は,形容詞“赤い”が名詞“リンゴ”の色スロットのデフォルトの値“赤い”を上書きすることで形成されると考えられる.また,非典型名詞句“茶色いリンゴ”の概念表象は,“茶色い”が名詞の色スロットを“赤”から“茶”に書き換えることで形成されると考えられる.もしそうであるならば,典型名詞句と比較して,非典型名詞句の理解時間は,スロットの値の書き換えの分,長くなるだろう.また,典型名詞句の意味表象の構造は,形容詞のない裸名詞句と同様なので,記銘の後,再生された場合,非典型名詞句よりも多く形容詞が脱落しているだろう.この予測は実験でも確認され,仮説が支持された.