2019 年 72 巻 7 号 p. 444-448
直腸肛門部悪性黒色腫(Anorectal malignant melanoma;以下,AMM)はまれな疾患で非常に予後不良である.今回,リンパ節転移を伴うAMMに対して手術を施行し,長期生存を得た1例を経験した.症例は79歳,女性.下血を主訴に前医受診.下部消化管内視鏡検査にて歯状線上に腫瘍を認め,経肛門局所切除を施行しAMMと診断され,追加治療目的に当科紹介受診.CT検査で直腸傍リンパ節の腫大を認めたが,他に明らかな転移を認めず,腹鏡下腹会陰式直腸切断術,中枢側D3郭清を施行.病理検査結果は第7版AJCC皮膚メラノーマ病期分類にてpT4bN3M0StageIIICであった.術後補助化学療法は施行せず,術後6年無再発生存中である.本症例に本邦での5年以上の無再発長期生存例10例を加えた検討からは,AMMはT1でもリンパ節転移を伴う可能性が高く,直腸切断などの広範囲切除の必要性が示唆された.