2021 年 74 巻 8 号 p. 476-481
本邦における消化管異物は魚骨が占める割合が多く,稀に消化管穿孔を起こし治療を要する.今回,われわれは魚骨によるS状結腸穿孔の1例を経験したので報告する.症例は86歳,女性.腹痛,下痢,嘔吐を主訴に当院を受診された.CT検査ではS状結腸に直線状の高吸収域像を認め,異物によるS状結腸の穿孔と診断した.術中所見では,S状結腸の穿孔と膿瘍形成を認めたため,穿孔部切除・吻合に加えて,膿瘍腔ドレナージと回腸人工肛門造設を行った.本邦における魚骨による大腸穿孔の報告は検索しうる限り自験例を含めて38例であり,男性に多く,横行結腸とS状結腸に多い傾向にあった.術前のCT検査で腹腔内膿瘍や腹水が疑われた症例では,そのおよそ9割が手術を要していた.また,人工肛門造設については,高齢者や術前より汎発性腹膜炎を呈している症例,術前のCT検査や術中所見で腹水や腹腔内膿瘍を認めた症例に施行されている傾向にあった.