1965年から1973年までに愛知県がんセンターで手術された大腸癌は487例で,その中にいわゆる"早期大腸癌"(癌浸潤が粘膜及び粘膜下層に限局しているもの)は36例(7.4%)あった.
肉眼型では,早期癌は隆起を示すものが多く,m癌では100%,sm癌では74%が隆起型であった.これは進行癌で,潰瘍型がほとんどであるのと対照的である.内視鏡による正診率は,m癌で46.2%,sm癌で82.4%と低く,誤診例はいつれも良性ポリープと診断されている.この事実は,内視鏡観察のみでは,早期大腸癌と良性ポリープの鑑別が不可能であることを示している.従って,内視鏡下の生検及び細胞診がそれらの鑑別と,早期大腸癌の発見に重要であり,更には,近年可能となった内視鏡下のポリープ切除は,"完全生検"によるポリープ性病変の詳細な検索を可能にし,診断確定により適当なる治療法の選択に寄与している.