1992 年 45 巻 6 号 p. 837-842
教室で過去11年間に経験した大腸癌手術症例は491例で,粘液癌は27例(5.5%)であった.この粘液癌の臨床病理学的因子,核DNAプロイディパターンについて,粘液癌をのぞいた他の464例を対照とし比較検討した.粘液癌は占居部位は他に比較して右側結腸に多く(48.1%),腫瘍径は大きく(平均8.3cm),肉眼型は1型(22.1%)が多い傾向があった.リンパ節転移,壁深達度,肝転移,stage分類は対照と有意な差はなかったが,腹膜播種性転移は高率(15%)であった.粘液癌切除例の累積5年生存率は70%で対照(56%)と有意な差はなかったが,治癒切除例の5年生存率は92%,10年生存率は81%で対照の68%,62%に比べ有意に良好であった.粘液癌の核DNAプロイディパターンはdiploid型が57.1%で対照の41.2%に比較してdiploid型が多い傾向であった.以上の結果から,大腸粘液癌に対しては積極的な治癒手術を行うことにより良好な予後が期待されると考えられた.