抄録
近年、ディスレクシアは音韻障害に起因すると考えられている。したがって、ディスレクシアの早期発見のためには、音韻的側面に着目して定型発達児の仮名単語の読みの特徴を明らかにする必要があると考える。乳幼児は、産出においても知覚においても、HL(重音節+軽音節)の音節量構造をもつ語を好む傾向があることが指摘されている。本研究は、幼児の読みにおいても、HLのほうがLH(軽音節+重音節)よりも容易であるのかどうかについて検討したものである。対象は5~6歳児15名であった。音節量構造がHLとLHの2種類の刺激語を仮名文字で呈示した。本研究の結果、平均誤答数はLHに比べてHLのほうが有意に少なかった。また、平均反応潜時および平均音読時間においても、HLのほうがLHよりも有意に短かった。これらの結果は、幼児においてはLHの語に比べてHLの語の読みが容易であること、音節量構造が幼児の読みの困難さに影響を及ぼすことを示唆している。