日本大腸肛門病学会雑誌
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異時性多発癌として発見された大腸早期印環細胞癌の1例
遺伝子学的検索を中心に
増渕 成彦小西 文雄冨樫 一智紫藤 和久柏木 宏金澤 暁太郎
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1999 年 52 巻 2 号 p. 128-132

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抄録

症例は49歳の男性.S状結腸癌術後フォローアップ目的にて施行した大腸内視鏡検査にて盲腸に径20mmのIs型の隆起性病変を認め,内視鏡的粘膜切除を施行した.病理組織学的所見では,周辺に中等度異型を示す腺管腺腫があり,中央に高分化腺癌から印環細胞癌への移行像が認められた.ごく一部で粘膜下層に浸潤していたが,脈管侵襲は認められなかったので追加腸管切除は施行しなかった.一次癌(S状結腸高分化腺癌)と二次癌(盲腸印環細胞癌)のmicrosatellite instability(MSI)を検索したところ,それぞれ4/6,5/6領域で陽性であった.Ki-ras Codon 12はwild typeであった.大腸早期印環細胞癌の報告例22例の臨床病理学的特徴について考察したところ,大腸多発癌例42%,多臓器癌合併例29%,癌家族歴陽性例21%であった.いずれも大腸癌発生の高危険群と考えられた.以上の文献的考察と本症例におけるMSIの結果より早期印環細胞癌は多発癌・重複癌症例に発生する傾向があると考えられた.

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