日本大腸肛門病学会雑誌
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3年間にわたり治癒しなかった宿便性直腸潰瘍の1例
木村 聖路鈴木 和夫相沢 中金沢 洋田中 正則
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キーワード: 宿便性潰瘍, 難治性
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1999 年 52 巻 2 号 p. 133-138

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抄録

症例は85歳,女性.基礎疾患として糖尿病,心房細動,うっ血性心不全があり,脳塞栓症発症後は寝たきりとなり自力排便ができない便秘状態だった.平成6年1月突然に血便が出現し前医にて直腸潰瘍を指摘されたため平成6年5月当科入院した.下部直腸後壁に2分の1周を占める境界明瞭な打抜き状潰瘍があり,組織像は非特異的慢性活動性炎症所見のみだった.宿便性直腸潰瘍と診断し,便通促進を図ったところ3ヵ月後には瘢痕化した.しかしその後も肛門痛と血便があり,平成7年3月に同部位に4分の1周の直腸潰瘍が再発してから,平成9年3月に至るまで縮小と増大を繰り返した.患者は平成9年8月に心不全の悪化のため死亡した.平成6年1月から平成9年3月まで3年余りの期間に便通コントロールにもかかわらず,1回は瘢痕化したもののすぐ再発し,慢性難治性潰瘍として観察され続けた宿便性潰瘍の稀な1例を報告した.

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