1999 年 52 巻 2 号 p. 156-162
症例は53歳,男性.検診で便潜血陽性を指摘され,精査目的で当院受診し,注腸X線検査,大腸内視鏡でRa後壁に粘膜下腫瘍様隆起を認めた.生検の結果,大腸癌の診断で低位前方切除術を施行した.切除標本では,中心陥凹部のみ癌が表層に露出しており,腫瘍はほとんどの部位で非癌大腸粘膜に覆われていた.切除の結果は,高分化型腺癌で,腫瘍周囲に著明なリンパ球浸潤を伴っており,深達度はsmであった.粘膜下腫瘍様発育形態を呈する大腸癌の報告は比較的稀で,病理組織学的にlymphoid stromaを伴う症例の報告は稀である.著者らは,lymphoid stromaを伴い,粘膜下腫瘍様発育形態を呈した直腸癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.