1999 年 52 巻 2 号 p. 163-168
S状結腸軸捻転を併発した特発性巨大結腸症に対して,S状結腸切除術を施行し,小児期より続く高度の便通異常が改善した症例を経験したので,文献的考察を含め報告する.症例は45歳,女性.小児期より便秘と診断され下剤を常用していた.腹痛,腹部膨満を主訴に当院を受診し,大腸通過時間測定,直腸肛門内圧測定,直腸肛門反射,注腸造影,排便造影検査により,S状結腸過長症,特発性巨大結腸症,会陰下垂症候群,Rectoceleと診断した.下剤にて排便を調節していたが,その経過観察中に再び腹痛,腹部膨満を生じ,S状結腸軸捻転と診断し,緊急手術を施行した.術後便通異常は著明に改善し,ほとんど下剤を必要としなくなった.便通異常を伴う特発性巨大結腸症は,手術により便通異常の著明な改善が望める.したがって十分な原因精査により,待機的手術の適応となりうると考えられた.