日本大腸肛門病学会雑誌
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分化度による亜分類からみた大腸粘液癌の臨床病理学的検討
池川 隆一郎中江 史朗中村 毅多淵 芳樹
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1999 年 52 巻 2 号 p. 98-106

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抄録

大腸粘液癌38例(全例深達度mp以上)を同時期に切除されたmp以上の高・中分化腺癌533例を対照とし比較した.粘液癌は対照群に比べて平均年齢は4.5歳若く(p<0.05),結腸では右側結腸に(p<0.05),直腸では肛門管に(p<0.05)高頻度に認められた.肉眼型では5型が多く(p<0.05),腫瘍径は有意に大きく(p<0.05),壁深達度ではse,a2以上の頻度が有意に高かったが(p<0.05),リンパ節転移率に有意差はなかった.またly3の占める割合が有意に(p<0.01)高率であったが,肝および腹膜転移率に有意な差はなかった.粘液癌の5年生存率は44%であり,対照群の53%に比べ有意差はないがやや不良であった.根治度A症例では,各々62%, 65%で差はみられなかった.また粘液癌を高分化型15例,中分化型6例,低分化型17例に分類し,高分化型と低分化型を比較した.低分化型は浸潤型(p<0.1),深達度se,a2以上(p<0.1),n2以上のリンパ節転移が多い傾向がみられ(p<0.1),ly3(p<0.05)およびstageIIIa以上(p<0.05)が有意に高率であった.逆に肝転移は高,中分化型にのみみられた(p<0.05).HID-AB染色では低分化型でsialomucin優位型が多い傾向にあった(p<0.1).以上より粘液癌では局所進行例が多く,積極的な局所の切除により治癒切除を得ることが重要と考えられた.亜分類では低分化型は,低分化腺癌や,印環細胞癌に近い特徴を有していると考えられた.

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