抄録
吸収式冷凍機においてインヒビターの添加による腐食制御は極めて重要な技術であることから, 428Kにおいてモリブデン酸塩と硝酸塩を含む17.3mol/kg LiBr+0.1mol/kg LiOH溶液中での鉄の不動態化挙動を, 電気化学的測定と高周波グロー放電発光分光分析 (rf-GDOES) によって検討した. その結果, モリブデン酸塩はこの系における主要インヒビターとして位置づけられ, モリブデン酸塩が孔食を誘発することなく鉄を不動態化できることが示された. しかし, モリブデン酸塩の酸化力はあまり高くないため, 鉄上に十分早く不動態被膜を形成させることはできない. これは硝酸塩を添加することによって補うことが可能であり, モリブデン酸塩と硝酸塩を両方含む溶液中では鉄は素早く不動態化する. ただし, 特にモリブデン酸塩濃度が低い場合, 硝酸塩は孔食を誘発しうることに注意しなければならない. モリブデン酸塩と硝酸塩を両方含む溶液中で生成する不動態被膜は, モリブデン酸塩のみを含む溶液中で生成する被膜よりずっと薄いことがわかった.