従来の教育政策研究の多くは,保守陣営と革新陣営との対立や教育分野の陣営と教育分野外の陣営との対立によって政策過程を把握してきた。しかし,産学連携に関連する政策はこのような対立枠組みでは把握されず,政策過程研究は不十分である。そこで,1970年代の国立の技術科学大学2校の設立を事例として検討する。分析枠組みとして,サバティア(Paul A. Sabatier)による唱道連携フレームを用いる。このフレームは,「政策サブシステム」内部における「政策志向学習」か,長期間にわたる政策変化に影響を及ぼすことに着目するものである。
技術科学大学設立の「政染サブシステム」には,文部省や自由民主党のみならず,国立高等専門学校協会や日本経営者団体連盟が参人していた。そして,「政策サブシステム」内部において,各アクターは信念システムを変化させることによって政策形成を導いた。この政策は,複線型の学制を意図していた高等専門学校を再び単線型の進学コースに取り込む点で重要てあった。従来の政策形成が文部省の一貫した方針の下にあるという理解は,1970年代の少なくとも事例の1つにおいては,修正の必要が存在する。