抄録
最近,実験室や実機の高温酸性環境中で,低炭素の13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼溶接継ぎ手に割れが生じたことが報告されている.これらは溶接金属と熱影響部の境界近傍で発生しており,本報ではこの応力腐食割れメカニズム,特に発生過程について議論する.溶液フロー型微小液滴セルを用いた電気化学的測定では溶接後熱処理の実施により,電位の貴化と安定性が確認された.また,熱影響部では溶接皮膜の下部にCr欠乏層が確認され,溶接後熱処理により消失した.このCr欠乏層の存在が応力腐食割れの発生の原因と考える.