抄録
導電性窒化物の生成を期待して硝酸溶液中でカソード処理されたSUS310Sステンレス鋼を,カーボンガス拡散層(GDL)との接触抵抗,分極挙動,表面の化学状態およびセパレータとして用いたときのPEFCセル性能の観点から評価した.この処理によってステンレス鋼とGDLとの接触抵抗は実用要求レベルまで低下した.XPS分析によれば,ステンレス鋼表面には酸化物に混ざって窒化物のピークが認められた.この窒化物は2~3 nm程度の厚さに過ぎないが,アノード分極に対しても安定であった.このカソード処理を施したSUS310Sステンレス鋼をセパレータとして単セル発電試験を行った結果,グラファイトセパレータを用いたセルに匹敵するセル性能を示したことから,本法はPEFCセパレータ用ステンレス鋼に対する簡便な表面処理法として極めて有用であると考えられる..