2015 年 64 巻 12 号 p. 535-539
本研究では土壌環境微生物を対象として,その腐食能およびそのメカニズムについて知見を得るために,4種(有機物の有り/無し,汽水/淡水)の培養条件で,一般的な湖沼より採取した土壌試料を植菌源として金属鉄とともに培養を行った.その結果,いずれの培養条件でも炭素鋼を腐食,減損する活性が見られ,特に有機物添加・汽水培地において硫酸還元活性,メタン生成活性とともに高い腐食活性が得られた.次世代シーケンス技術により,網羅的に環境試料(植菌源)と培養試料の微生物群集構造を比較したところ,培養により大きく微生物群集が変動し,環境試料では極めて低い割合でしか存在しなかったDesulfovibrio属細菌やClostridia綱細菌のような硫酸還元能の報告されている微生物グループが培養試料では優占化していることが明らかとなった.また,硫酸還元菌,メタン菌の抑制試験から硫酸還元菌がこの腐食に対して主たる役割を果たし,メタン菌の共存により腐食活性が強化されていることが推定された.土壌埋設設備への微生物の腐食影響を適正に評価するためには,硫酸還元菌,メタン菌などの相互作用を踏まえた評価が必要と考えられる.