Zairyo-to-Kankyo
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論文
二相ステンレス鋼の腐食反応の走査型電気化学顕微鏡観察
青木 聡谷口 友美酒井 潤一
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2015 年 64 巻 9 号 p. 414-420

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抄録

本研究は,走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いて,二相ステンレス鋼(DSS)を構成するフェライト(α)相およびオーステナイト(γ)相上における腐食反応をそれぞれ個別に観察し,DSSの腐食電位(約-0.15 V vs.SHE)における優先溶解機構を解明することを目的とした.1 mol/l HCl水溶液中の腐食電位においてα相,γ相直上に,プローブ電極を固定し,プローブ電極の電位を-0.10 Vから貴方向へ電位掃引速度20 mV/sで1.4 Vまで掃引し,プローブ電流値を測定した.プローブ電位が0~0.70 Vの領域では,プローブ電極上で水素の酸化反応が起こったことによるアノード電流が検出され,この電流値はα相上に比べγ相上でより大きかった.プローブ電位が0.70~1.2 Vの領域では,二価の鉄イオンが三価の鉄イオンに酸化されたことによるアノード電流が検出され,この電流値はγ相上に比べα相上でより大きかった.DSSの腐食電位において,α相では溶解反応が,γ相では水素イオンの還元反応がそれぞれ主たる反応となると考えられる.

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© 2015 公益社団法人 腐食防食学会
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