Zairyo-to-Kankyo
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論文
酸化剤含有NaOH水溶液中でFeに形成させたFe3O4皮膜中へのD2Oの拡散浸透挙動
春名 匠宮瀧 裕貴廣畑 洋平柴田 俊夫谷口 直樹立川 博一
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2018 年 67 巻 9 号 p. 375-380

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抄録

本研究では,試験溶液として採用した酸化剤含有沸騰45 mass% NaOH水溶液(424 K)中においてFeの浸漬試験を行い緻密な皮膜を形成させる浸漬時間の探索を行うこと,ならびに形成した皮膜に対する室温でのD2Oの浸透挙動を明らかにすることを目的とした.その結果,以下の知見が得られた.試験溶液中に0.4 ks以上浸漬したFe表面にはFe3O4が検出され,21.6 ksまでは浸漬時間の増加とともに皮膜厚さが放物線則に従って増加した.試験溶液中にFe を1.2 ksもしくは3.6 ks浸漬して形成したFe3O4皮膜にD2O浸透試験を行った結果,いずれの皮膜に対しても,浸透時間が1000 ksまでは,浸透時間の増加とともにD2O浸透量が増加し,それ以上の浸透時間ではD2O浸透量が定常値を示した.また3.6 ks浸漬して形成した皮膜に対する定常D2O浸透量の方が大きい値を示した.D2Oの浸透時間と浸透量の関係をFickの拡散方程式に基づいて解析した結果,1.2 ksおよび3.6 ks浸漬して形成したFe3O4皮膜に対するD2Oの拡散係数がそれぞれ5.1×10-15 cm2・s-1および9.9×10-15 cm2・s-1と算出されたため,本Fe3O4皮膜に対するD2Oの拡散係数は5.1×10-15~9.9×10-15 cm2・s-1の範囲に存在すると推定された.

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© 2018 公益社団法人 腐食防食学会
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