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論文
高温高純度水中におけるステンレス鋼のすき間内溶液導電率のIn-situ分析
相馬 康孝小松 篤史上野 文義
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2018 年 67 巻 9 号 p. 381-385

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抄録

高温高純度水中におけるステンレス鋼のすき間内で発生する局部腐食現象のメカニズムを解明するため,すき間内溶液の導電率をIn-situ測定する手法(センサー)を開発し,すき間内環境と局部腐食との関係を分析した.センサーは,高純度アルミナで絶縁した直径約250μmのステンレス鋼製電極をすき間形成材に埋め込み,電気化学インピーダンス法により,電極直下における局部的な溶液導電率,κcrevを取得するものである.SUS316Lステンレス鋼のテーパー付きすき間内に複数のセンサーを設置し,温度288℃,圧力8 MPa,純酸素飽和した高純度水中において,κcrevの時間変化を100 h計測した.すき間の間隔(g)が約59.3μmの位置ではκcrevは8~11μS・cm-1であり,288℃純水の導電率(3.7μS・cm-1)との差は比較的小さく,試験後に局部腐食は見られなかった.一方,g ≈ 4.4μmの位置におけるκcrevは,実験開始直後から上昇を続け,約70 hで最大値約1600μS・cm-1を示し,試験後にこの位置の近傍で粒界を起点とした局部腐食が発生した.得られたκcrevの値と,すき間内で生成した酸化物の安定性を考慮した熱力学平衡計算結果は,すき間内溶液のpHが3.53まで酸性化しうることを示した.以上のことから,バルク水が高純度であってもすき間内においては溶液の酸性化が進行し,その結果,局部腐食が発生したと結論された.

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© 2018 公益社団法人 腐食防食学会
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