材料と環境
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SUS304鋼の不働態化pHにおよぼす塩化物イオンと溶存酸素濃度の影響
長岡 彬野瀬 清美松橋 亮松岡 和巳梶村 治彦
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2020 年 69 巻 2 号 p. 49-57

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抄録

ステンレス鋼のすきま腐食発生および進展課程におけるすきま内の環境は,水素イオン濃度や塩化物イオン濃度が高く,溶存酸素はほとんど存在しない.一方,すきま腐食が進展を停止する課程では,すきま内の水素イオンや塩化物イオンが希薄化することや,すきま外部からすきま内部へ溶存酸素が浸入し,活性状態にあるステンレス鋼が不働態化する.

ステンレス鋼のすきま腐食における再不働態化挙動を把握することは,ステンレス鋼の耐食性を把握する上で極めて重要であると考えられる.このため,不働態化pHと塩化物イオン濃度の関係を調査した.

その結果,塩化物イオン濃度の上昇や,溶存酸素濃度の低下に伴い,SUS304鋼の不働態化pHが上昇する結果が得られた.不働態化現象は,カソード電流密度がアノード電流密度のピーク値(ICRIT)を上回ったときに生じる.従って,塩化物イオン濃度の上昇に伴うICRITの上昇や,水素イオンの還元電流の減少,溶存酸素濃度の低下に伴う溶存酸素の還元電流の減少が,不働態化pHの低下に寄与したと推定される.

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© 2020 公益社団法人 腐食防食学会
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