2021 年 70 巻 6 号 p. 199-208
連続定電流ステップ法(CCS法)により,すきま腐食進展時の電位-電流密度関係が得られるが,これは,すきま内閉塞空間に存在するpHの低いanolyte中における「金属の電位と活性溶解電流密度との関係」を間接的に示すと考えれば,自然海水中ですきま腐食が進展している場合のステンレス鋼が示す電位(Eout)から,すきま内の金属溶解量(すきま腐食進展量)が電気化学的に推定できる可能性がある.本報告では,それを検証するために,自然海水浸漬試験においてすきま腐食を起こした部分の金属溶解量(Qcrev(vol.))と別途,CCS法の電位-電流密度関係を利用した自然海水中での自然電位の経時変化から計算した金属溶解量(Qcrev(CCS))との相関性について検討した.その結果,Qcrev(vol.)はQcrev(CCS)を用いて等価的な下式で示すことができるなどを示した.
Qcrev(vol.)=8.8850+0.2847・Qcrev(CCS)
これより,自然海水浸漬試験におけるすきま腐食進展量は,実験室の電気化学的手法であるCCS法によって求めたECCS-i関係と,すきま腐食発生後の自然電位の経時変化から,十分推定可能との見解を得た.