ITOとAlがH3PO4溶液中で短絡した場合のITOの還元的腐食挙動を電気化学試験によって調査した.ITOはH3PO4溶液中でAlと短絡した場合と-0.7 V vs. SCE以下に分極された場合に還元されてInとSnが生成した.これを抑制するためにHNO3を添加した結果,硝酸イオンの還元が優先することで,ITOの還元は抑制された.またITOはH3PO4溶液中でアノード分極しても溶解しないが,還元後にアノード分極すると溶解するため,所定のITO層を電解研磨する方法としても応用できる可能性が示された.
大型放射光施設を利用したμ-XRD解析により炭素鋼の初期腐食挙動における錆層の結晶構造状態可視化を行った.ニューラルネットワークによるμ-XRDスペクトルの解析から,さび層は1週間暴露時点から表層がγ-FeOOH,内層がα-FeOOH及びγ-FeOOHの複層構造を示し,さらに4週間暴露以降では腐食進展箇所においてα-FeOOH単相が認められた.
核燃料再処理機器に使用されているTaに対し水酸化ナトリウム水溶液での除染による腐食挙動の経時変化を調査した.1から7 mol・L-1 NaOH水溶液に室温にて168 hまで浸漬した後,腐食減量測定,ラマン分光分析およびXRDを行った.腐食速度は濃度とともに増加するが,ある時間でピークを示した.7 mol・L-1にて48 h以上の浸漬で試料表面にNa8Ta6O19の生成をラマン分析およびXRDで確認した.7 mol・L-1にて分極抵抗の経時変化および皮膜抵抗と電荷移動抵抗の和の経時変化は同じ傾向を示した.Taの腐食挙動の経時変化はNaOH水溶液浸漬中に生成するNa8Ta6O19沈殿皮膜が成長しTaの腐食を抑制する事が原因と考えられる.
連続定電流ステップ法(CCS法)により,すきま腐食進展時の電位-電流密度関係が得られるが,これは,すきま内閉塞空間に存在するpHの低いanolyte中における「金属の電位と活性溶解電流密度との関係」を間接的に示すと考えれば,自然海水中ですきま腐食が進展している場合のステンレス鋼が示す電位(Eout)から,すきま内の金属溶解量(すきま腐食進展量)が電気化学的に推定できる可能性がある.本報告では,それを検証するために,自然海水浸漬試験においてすきま腐食を起こした部分の金属溶解量(Qcrev(vol.))と別途,CCS法の電位-電流密度関係を利用した自然海水中での自然電位の経時変化から計算した金属溶解量(Qcrev(CCS))との相関性について検討した.その結果,Qcrev(vol.)はQcrev(CCS)を用いて等価的な下式で示すことができるなどを示した.
Qcrev(vol.)=8.8850+0.2847・Qcrev(CCS)
これより,自然海水浸漬試験におけるすきま腐食進展量は,実験室の電気化学的手法であるCCS法によって求めたECCS-i関係と,すきま腐食発生後の自然電位の経時変化から,十分推定可能との見解を得た.