2021 年 70 巻 9 号 p. 284-294
この研究は,ピーニング処理や冷間圧延316ステンレス鋼が340℃の大気時効中に表面が硬化する現象を調べることを目的とした.はじめに弊社が化学装置や原子力分野の塩化物応力腐食割れ(SCC)対策として使用しているPSZ(イットリュウム部分安定化ジルコニア)ショットによるピーニング処理法を紹介し,ピーニング処理316ステンレス鋼の組織や物理特性を紹介する.次にピーニン処理材や冷間圧延316ステンレス鋼を340℃で熱時効したときの組織や特性の経時変化を報告する.冷間加工材では時効が進むと数%の引張り追い歪で粒界割れを発生するが,このメカニズムを推定した.歪誘起マルテンサイトを介した酸素の内方拡散による粒界硬化と割れの可能性を提唱する.