2025 年 74 巻 7 号 p. 133-141
本研究では,金属イオン錯体の滴定曲線を利用し,複数の反応の平衡定数を効率的かつ合理的に推定し,主要な反応を選出する手法を提案した.まず,滴定曲線を測定し,候補となる錯体反応を包括的にリストアップした.つぎにシミュレーション結果と実験データの尤度を最大化する平衡定数推定問題を定式化し,不安定性を抑えるためにベイズ推定を適用した.さらに,pH変化に寄与する主要な錯体反応を選出するために,赤池の情報量基準(AIC)を指標とするモデル選択を実施した.本手法の有効性を検証するため,本手法を実際に水酸化アルミニウムおよびフッ化アルミニウム錯体の滴定反応に適用し21種の候補反応から8つの主要反応を選出した.