大気腐食における付着水分量と初期段階での腐食速度の関係性において,液膜下で観察される腐食速度のピークが滴状濡れの下でも生じるのかについて検討した.亜鉛のERセンサにNaClを付着させ一定の温度,湿度で360時間試験を行った.付着塩分量とRHから計算できる付着水分量と腐食速度を比較した.本実験の条件においては腐食速度のピークは発生せず,付着水分量の増大と共に腐食速度も上昇した.
様々な環境因子(温度,湿度,光,塩分など)が複合的に作用して塗膜の防錆性能を劣化させる.しかし,それぞれの因子の影響や,それらの複合効果を評価することは難しい.防錆性能は塗膜の電気の流れ難さに相当するインピーダンスと相関が強い.そこで,交流電気特性に着目して,水分や塩分の塗膜中への浸透挙動に及ぼす,光照射の影響を調べた.その結果,光照射による材質変化が水分および/または塩分の浸入を促し,インピーダンスを低下させることがわかった.また,塗膜中に水分および/または塩分が浸入した場合,10-1s以下の緩和時間にピークを持つDRT(緩和時間分布)スペクトルが観察された.
本研究では,金属イオン錯体の滴定曲線を利用し,複数の反応の平衡定数を効率的かつ合理的に推定し,主要な反応を選出する手法を提案した.まず,滴定曲線を測定し,候補となる錯体反応を包括的にリストアップした.つぎにシミュレーション結果と実験データの尤度を最大化する平衡定数推定問題を定式化し,不安定性を抑えるためにベイズ推定を適用した.さらに,pH変化に寄与する主要な錯体反応を選出するために,赤池の情報量基準(AIC)を指標とするモデル選択を実施した.本手法の有効性を検証するため,本手法を実際に水酸化アルミニウムおよびフッ化アルミニウム錯体の滴定反応に適用し21種の候補反応から8つの主要反応を選出した.