抄録
遅れ破壊による低合金鋼の水素トラップと微小破壊のダイナミックスを2種類の圧電素子センサで調べた. 一つのセンサは, 受感部直径1.6mmの棒状小型センサ (ピンデューサー) で, CT試験片にねじ込まれている. このセンサは, 先端の7×10-10m3の円錐状空間の高速水素ガス圧の変動を測定する. もう一つのセンサは, 0.45MHz中心周波数の共振型AEセンサで, 微小き裂によるAEをモニターする. ピンジューサーは, き裂発生前の水素ガス圧の高速発生によるAEのみを検出した. 10-17m3体積をもつ微小空隙におけるガス圧は107MPaに達するものと推定された. 長時間水素チャージ後には, 水素ガス発生とき裂発生によるAEが同時に検出されたが, 水素ガスが開口き裂から円錐状空間に高速移送されたことを示唆した. ピンデューサーの有限受感部大きさのため, 微小ボイドの水素ガス圧生成速度の定量的評価は依然難しいが, 高速高圧ガス圧の発生が示唆された.