Zairyo-to-Kankyo
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53 巻, 8 号
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  • 吉川 光昭
    2004 年 53 巻 8 号 p. 388-395
    発行日: 2004/08/15
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
    近年, 国内外の船主から,「従来のVLCCに比較して, 近年建造されたVLCCタンカーのカーゴオイルタンク (COT) に腐食が多発する」,「COTの天井部 (上甲板裏面) に発生する全面腐食やタンク底板の孔食が多い」との声が聞かれるようになった. 今回, VLCC実船調査による腐食発生実態の把握を中心に据え, COT内に生ずる腐食発生原因解明に努めた. 以下の結果を得た.
    (1) 上甲板裏面の腐食
    ・COT内のガス成分は自然界では存在しないH2SとO2が共存する非常に厳しい環境下にある. 腐食は昼夜間の温度差に伴う結露現象によると考えられる.
    ・上甲板裏面の腐食は全面腐食で, その生成物は固体Sと酸化鉄層が交互に積層された形態を取る. そのうち固体Sの占める割合が高く, 重量で最大60%に達することもある.
    ・D/HとS/Hの船型および鋼種による腐食速度の差異は無かった
    (2) タンク底板の腐食
    ・底板の腐食は孔食で, オイルコート膜の状態が不均一で膜厚が薄い部分に見られる. S/Hでは水滞留部または流水部に孔食が多く見られる. D/HはS/Hに比較して就航直後から孔食発生頻度は高い.
    ・孔食は入渠時を基点に, 被膜の損傷と局所的電池形成で発生・成長する. S/HとD/Hでの孔食成長速度に差が無く, また, 鋼種による孔食発生・成長形態の差異は無い.
  • 曽我部 隆弘, 竹本 幹男
    2004 年 53 巻 8 号 p. 406-411
    発行日: 2004/08/15
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
    遅れ破壊による低合金鋼の水素トラップと微小破壊のダイナミックスを2種類の圧電素子センサで調べた. 一つのセンサは, 受感部直径1.6mmの棒状小型センサ (ピンデューサー) で, CT試験片にねじ込まれている. このセンサは, 先端の7×10-10m3の円錐状空間の高速水素ガス圧の変動を測定する. もう一つのセンサは, 0.45MHz中心周波数の共振型AEセンサで, 微小き裂によるAEをモニターする. ピンジューサーは, き裂発生前の水素ガス圧の高速発生によるAEのみを検出した. 10-17m3体積をもつ微小空隙におけるガス圧は107MPaに達するものと推定された. 長時間水素チャージ後には, 水素ガス発生とき裂発生によるAEが同時に検出されたが, 水素ガスが開口き裂から円錐状空間に高速移送されたことを示唆した. ピンデューサーの有限受感部大きさのため, 微小ボイドの水素ガス圧生成速度の定量的評価は依然難しいが, 高速高圧ガス圧の発生が示唆された.
  • 八代 仁, 三浦 慎吾, 河田 勝, 熊谷 直昭, 岩渕 明
    2004 年 53 巻 8 号 p. 412-416
    発行日: 2004/08/15
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ワイヤーカット放電加工機の加工水中における鉄系加工材料の腐食問題に関連して, 希薄硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム水溶液中における鉄細線 (∅0.1mm) の抵抗変化を測定し, この方法が腐食に関する水質モニター法として適切であることを示すことである. 鉄線を, 種々の鉱酸溶液中で前処理した結果, 硝酸溶液中における溶解速度は, 他の酸溶液中の約100倍大きかった. 引き続き硫酸ナトリウム溶液中で腐食試験を行ったところ, 硝酸処理した鉄線の腐食速度は, 他の酸溶液中で処理した場合の腐食速度の約十分の一になった. TOF SIMS 分析の結果, 表面の有機物汚染は, 硝酸処理や過塩素酸処理によって減少するが, 塩酸処理では減少しなかった. 結局, 前処理法は0.1mol dm-3過塩素酸溶液中で10分とした. 静止水中での鉄線の腐食速度は硫酸イオン濃度に依存したが, 鉄板では依存しなかった. これは, 鉄線に対しては酸素拡散が律速とならないためである. このように, ワイヤーカット放電加工機の水質は, 抵抗法に基づく鉄線の腐食速度測定によって適切に評価できる.
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