近年, 国内外の船主から,「従来のVLCCに比較して, 近年建造されたVLCCタンカーのカーゴオイルタンク (COT) に腐食が多発する」,「COTの天井部 (上甲板裏面) に発生する全面腐食やタンク底板の孔食が多い」との声が聞かれるようになった. 今回, VLCC実船調査による腐食発生実態の把握を中心に据え, COT内に生ずる腐食発生原因解明に努めた. 以下の結果を得た.
(1) 上甲板裏面の腐食
・COT内のガス成分は自然界では存在しないH
2SとO
2が共存する非常に厳しい環境下にある. 腐食は昼夜間の温度差に伴う結露現象によると考えられる.
・上甲板裏面の腐食は全面腐食で, その生成物は固体Sと酸化鉄層が交互に積層された形態を取る. そのうち固体Sの占める割合が高く, 重量で最大60%に達することもある.
・D/HとS/Hの船型および鋼種による腐食速度の差異は無かった
(2) タンク底板の腐食
・底板の腐食は孔食で, オイルコート膜の状態が不均一で膜厚が薄い部分に見られる. S/Hでは水滞留部または流水部に孔食が多く見られる. D/HはS/Hに比較して就航直後から孔食発生頻度は高い.
・孔食は入渠時を基点に, 被膜の損傷と局所的電池形成で発生・成長する. S/HとD/Hでの孔食成長速度に差が無く, また, 鋼種による孔食発生・成長形態の差異は無い.
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