材料と環境
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抵抗測定による希薄硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム水溶液中における鉄線の腐食速度評価
八代 仁三浦 慎吾河田 勝熊谷 直昭岩渕 明
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2004 年 53 巻 8 号 p. 412-416

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抄録
本研究の目的は, ワイヤーカット放電加工機の加工水中における鉄系加工材料の腐食問題に関連して, 希薄硫酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム水溶液中における鉄細線 (∅0.1mm) の抵抗変化を測定し, この方法が腐食に関する水質モニター法として適切であることを示すことである. 鉄線を, 種々の鉱酸溶液中で前処理した結果, 硝酸溶液中における溶解速度は, 他の酸溶液中の約100倍大きかった. 引き続き硫酸ナトリウム溶液中で腐食試験を行ったところ, 硝酸処理した鉄線の腐食速度は, 他の酸溶液中で処理した場合の腐食速度の約十分の一になった. TOF SIMS 分析の結果, 表面の有機物汚染は, 硝酸処理や過塩素酸処理によって減少するが, 塩酸処理では減少しなかった. 結局, 前処理法は0.1mol dm-3過塩素酸溶液中で10分とした. 静止水中での鉄線の腐食速度は硫酸イオン濃度に依存したが, 鉄板では依存しなかった. これは, 鉄線に対しては酸素拡散が律速とならないためである. このように, ワイヤーカット放電加工機の水質は, 抵抗法に基づく鉄線の腐食速度測定によって適切に評価できる.
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© 社団法人腐食防食協会
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