ウニ類による海洋構造物の塗膜の損傷が, 海洋構造物の保守管理に従事する潜水士により観察された. このような事例報告は無いことから, 海洋構造物におけるウニ類の生息状況と塗膜損傷の精査を行った. その結果, タワシウニ, ムラサキウニなど4種類のウニが観察され, タワシウニなど3種のウニの生息箇所下で塗膜損傷が観察された. また, 消化管に餌生物と共に塗膜片も観察された. 損傷した塗膜の表面でより頻繁に観察されたタワシウニは, 海岸の岩盤等に穴を掘りそこに生息し, 穴に流入する海藻片などを摂餌しほとんど移動しないといわれている. 海洋構造物の金属基質では穴が掘れないため, 餌生物である海藻やフジツボ類を噛み砕き摂餌しながら移動すると思われた. その際, 硬い歯で塗膜を傷つけるのであろう. なお, タワシウニで生息箇所下の塗膜損傷の観察頻度が圧倒的に高いが, ムラサキウニの歯の硬度はタワシウニと同程度であり, なぜタワシウニで顕著なのかについては不明である.