抄録
1989年3月に発表された中学校および高等学校の家庭科学習指導要領では、性別役割分業観は一掃され、小中高のすべて男女が共に学ぶ教科として、21世紀に向けての人の生き方、家庭のあり方、社会のあり方に関わる人間形成の役割を担うこととなった。従来より、小学校は男女共学であったが、中学校においては家庭科の内容の『一部乗り入れ』が9年間に渡り実施されていた。この間、多くの家庭科の教師は、内容の一部を別学で教えることから、多くの内容を共学で教えることへ移行させ、その質量を拡大させた。新学習指導要領移行期となった現時点で『一部乗り入れ』制の成果をまとめることは、歴史的にも意味があり、高等学校の共学実施への条件整備からも重要と考え、公立中学の共学家庭科の達成度について実状調査を実施した。その結果(1)共学の経験は3〜6年の教師が多く(2)内容は食物の実施が多いが他の領域でも実施され(3)研修は書籍類によって自己研修され(4)教室環境は問題が多いことが明らかとなった。