日本教科教育学会誌
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数学教育における主体的学習と社会的構成主義に立つ学習との関連
高橋 悦美
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1996 年 19 巻 2 号 p. 97-102

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抄録

今日の教育転換期において教科教育を論じるには,教育内容に関わる科学や芸術の性格,および,それらと人間との関係の捉え方が重要であるとの立場に立ち,担当教科である数学が拠って立つ思想や信念といった哲学的,思想的基盤を自らのうちに作り上げたいと願っている。この研究では,人間観および学習観・知識観を分析し,この分析から数学の哲学としての社会的構成主義が算数・数学教育と適合性を持つことを明らかにする。次に,社会的構成主義が,算数・数学教育の実践においてどう適用できるかを,社会的構成主義が述べる知識変容と関係付けながら論じる。さらに,社会的構成主義に立つ学習が主体的学習と整合的関係にあるかどうかを検討した。この研究によって,新しい人間観,学習観に立つ時,算数・数学教育と極めて整合性を持つ社会的構成主義が,実存主義の立場から検討された主体的学習と整合的関係にあるとの結果を得た。社会的構成主義の数学観を教師が持つことが新しい時代の数学教育への移行を可能とし,促進するために重要である。

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© 1996 日本教科教育学会
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