日本教科教育学会誌
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数学教育における問題作りとその意義 : 類似問題の作成を中心として
崎谷 真也
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1996 年 19 巻 2 号 p. 103-109

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抄録

本稿では,数学の問題を解き終えた後,その類似問題を作るという活動に焦点を当て,その認知的意義を明らかにし,こうした活動が数学の問題解決能力の育成につながるという1つの調査結果を示した。解き終えた問題と文脈の異なる類似問題を作るためには問題の構造に着目しなければならないが,まず,問題の構造的類似性の認知過程を分析し,それを基に,こうした類似問題の作成は問題によって与えられた"条件"と求める"目標"の抽象化に基づくことを述べた。そして,こうした抽象化を通して,『(条件)がわかっていて,(目標)を求める問題は,(解法計画)(すれ)ばよい』という一般的な問題解決の手順に関する知識を構成することができ,それが問題解決能力の育成につながることを指摘した。次いで,日頃の授業で類似問題を作るという経験を積んでいる生徒にとっては,解き終えた問題の類似問題を作るという活動が文脈の異なる類似問題の解決を促進するが,問題作りの経験が乏しい生徒においては,こうした効果が見られないことを示す調査結果を述べた。

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© 1996 日本教科教育学会
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