日本教科教育学会誌
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19 巻, 2 号
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  • 中川 陽一, 西川 純, 根本 和成
    原稿種別: 本文
    1996 年19 巻2 号 p. 57-64
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,事象に対して子どもが抱いた疑問と学習内容の定着との関係を明らかにすることにある。その際,問題把握の過程において子どもにより事象のとらえ方で異なってあらわれる疑問の質に注目した。まず,各次の初めにその次の中心となるような事象を提示し,表出した疑問を問題を意識した段階(『疑問』型)と既有の経験をもとに因果関係まで予測している段階(『仮説』型)に分け,プレテスト及びポストテストの正答率を比較した。その結果,次の点が明らかになった。『仮説』型と『疑問』型を比較した場合,『仮説』型の正答率が有意に高い。また,学習進行とともに『疑問』型から『仮説』型への変化がみられ,それに伴う正答率は高い水準で推移している。
  • 松本 和子
    原稿種別: 本文
    1996 年19 巻2 号 p. 65-70
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
  • 荒井 紀子, 高間 由美子
    原稿種別: 本文
    1996 年19 巻2 号 p. 71-79
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,まず初めに,家庭科の高齢者関連学習を構成する際の基本的視点として,福祉教育の理念に着目し,それについて検討した。次に,福祉教育の理念に基づいた問題解決型の授業の設計,ならびに授業の有効性についての分析を行った。授業設計は,福祉教育の3つの視点(1)人権感覚と意識の開発(2)現行制度の理解と問題把握(3)問題解決のための意欲の涵養と方法の体得,を重視した授業構成とし,学習方法として車椅子や買物カートによる生活空間の調査とそれを踏まえた解決方法の立案,発表からなるグループ学習,個人学習を組み入れた。福井大学附属中学校3年生を対象に技術・家庭で授業を実施した。授業前後の生徒の学習シートや自由記述を分析した結果,『老人を支える』ことに関する生徒の意識に変化がみられ,行動的,問題解決的意識が増加し,社会的視点や担い手意識もより強まる傾向がみられた。また高齢者関連学習への意欲・関心が学習しない生徒群に比べ増加し,授業の有効性が確認された。
  • 二宮 裕之
    原稿種別: 本文
    1996 年19 巻2 号 p. 81-86
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿はアメリカの教育改革の中で提起された『高次の能力』の中のひとつとして教科教育全般において注目を集めているリーズニングについて考察したものである。リーズニングの捉え方には大きく,学習理論の連合説的な捉え方,及びフォーマル,インフォーマルの2種類の認知説的な捉え方の3通りが存在する。その中で特にインフォーマル・リーズニングは,日本の新指導要領における新学力観と整合的であり,それは新学力観において求められる能力の1つとして同定される。さらに,従来技術活動に重点の置かれていた技術教育において,3つのリーズニングがどのような技術活動において求められるかを明らかにした。そして中等技術教育においては特にインフォーマル・リーズニングを重視した実践が望ましい点を指摘し,そこに必要な学力への新しい視点を提起した。
  • 清水 紀宏
    原稿種別: 本文
    1996 年19 巻2 号 p. 87-95
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,筆者が構築したストラテジー活用能力の点数化の枠組みに基づき,ストラテジー活用能力と文章題解決能力との関連を検討することである。そのために,ストラテジーの指導を受けていない小学校第6学年の児童131名を対象として,6種類のストラテジー活用能力と文章題解決能力についての調査を実施し,分析を行った。その主要な結果として,以下の諸点が挙げられる。(1)文章題解決能力の上位群と他の群との間に,計画に関わるストラテジーの総合的な活用能力に有意差が認められた。(2)文章題解決能力の上位群と他の群との間に,計画に関わるストラテジーの活用能力に有意差が認められた。(3)計画に関わるストラテジーの活用能力のグループ間の差異を特徴づけるものは,活用されたストラテジーの「質」や「正確さ」であった。
  • 高橋 悦美
    原稿種別: 本文
    1996 年19 巻2 号 p. 97-102
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    今日の教育転換期において教科教育を論じるには,教育内容に関わる科学や芸術の性格,および,それらと人間との関係の捉え方が重要であるとの立場に立ち,担当教科である数学が拠って立つ思想や信念といった哲学的,思想的基盤を自らのうちに作り上げたいと願っている。この研究では,人間観および学習観・知識観を分析し,この分析から数学の哲学としての社会的構成主義が算数・数学教育と適合性を持つことを明らかにする。次に,社会的構成主義が,算数・数学教育の実践においてどう適用できるかを,社会的構成主義が述べる知識変容と関係付けながら論じる。さらに,社会的構成主義に立つ学習が主体的学習と整合的関係にあるかどうかを検討した。この研究によって,新しい人間観,学習観に立つ時,算数・数学教育と極めて整合性を持つ社会的構成主義が,実存主義の立場から検討された主体的学習と整合的関係にあるとの結果を得た。社会的構成主義の数学観を教師が持つことが新しい時代の数学教育への移行を可能とし,促進するために重要である。
  • 崎谷 真也
    原稿種別: 本文
    1996 年19 巻2 号 p. 103-109
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本稿では,数学の問題を解き終えた後,その類似問題を作るという活動に焦点を当て,その認知的意義を明らかにし,こうした活動が数学の問題解決能力の育成につながるという1つの調査結果を示した。解き終えた問題と文脈の異なる類似問題を作るためには問題の構造に着目しなければならないが,まず,問題の構造的類似性の認知過程を分析し,それを基に,こうした類似問題の作成は問題によって与えられた"条件"と求める"目標"の抽象化に基づくことを述べた。そして,こうした抽象化を通して,『(条件)がわかっていて,(目標)を求める問題は,(解法計画)(すれ)ばよい』という一般的な問題解決の手順に関する知識を構成することができ,それが問題解決能力の育成につながることを指摘した。次いで,日頃の授業で類似問題を作るという経験を積んでいる生徒にとっては,解き終えた問題の類似問題を作るという活動が文脈の異なる類似問題の解決を促進するが,問題作りの経験が乏しい生徒においては,こうした効果が見られないことを示す調査結果を述べた。
  • 石田 淳一
    原稿種別: 本文
    1996 年19 巻2 号 p. 111-115
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,2学年の逆思考文章題の指導場面において,□を用いた式を導入し,加減文章題の意味構造に基づいた非標準的な式表示の指導を4時間行った。事前・事後テストの結果,事前テストでは実験群,統制群ともに標準的な式が多かったが,事後テストでは実験群に問題の意味構造に基づいた非標準的な式が多くなった。さらに,実験群ではテープ図および□の答えを求める求答式の正答率も高かった。この結果は,2学年に□を用いた式を導入し,問題の意味構造に基づいた式表示の指導が可能であることを示唆する。
  • 中間 美砂子, 伊藤 圭子
    原稿種別: 本文
    1996 年19 巻2 号 p. 117-122
    発行日: 1996/09/30
    公開日: 2018/05/08
    ジャーナル フリー
    家庭科を担当している小学校教員のカリキュラム改善についての意見を把握し,そのうえで,カリキュラムについての検討を行うこととした。調査対象は,全国の小学校家庭科研究会地方理事を含む家庭科担当教員である。配布数は計270票,回収数は176票で,回収率は65.2%であった。その結果,教科名を生活系とするものがかなりみられる,生活科・低学年からの家庭科を望む者が多い,家族の生活と住居領域を二つに分ける,または,環境,消費者教育,福祉などとする,実習題材を指定しない,小・中・高の関連を考えたカリキュラムとするなどが望まれていることが明かとなった。これらの結果から,(1)教科名,(2)低学年からの家庭科,(3)統合領域としての家族・家庭生活領域の設定,(4)環境教育,消費者教育,福祉教育の取り扱い方の工夫,(5)実習題材の自由化,(6)小・中・高の関連の上に立つ教科理論の明確化などが今後の検討課題とされなければならないことが明らかとなった。
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