抄録
日本では日本語を母語としない外国籍の子どもが増えており,日本語の学力差の厳しい学級では,実態に即した指導法を模索している。海外の日本人学校では以前から同様の課題を抱え,創意工夫を行ってきたが,子どもの実態は様々であり,指導法の蓄積は十分ではない。本論は日本人学校や国内の外国籍を持つ子どもが多く在籍する学校における授業研究の一助となるよう,厳しい日本語の学力差のある学級にも有効な授業づくりを提案すること目的とする。実際の授業では「互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる」言語活動を3つの過程に分け,子どもの授業以外での会話を観察することで,思考の内実を把握し,3つの過程における手立てを模索した。実践を通して子どもたちが急速に日本語を獲得したわけではないが,それぞれの手立ては有効であり,自分の考えを伝えたいという思いが新しい日本語の獲得に繋がるということが明らかになった。