日本教科教育学会誌
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38 巻, 2 号
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  • 小学校4年生を対象として
    筒井 茂喜, 日高 正博, 後藤 幸弘
    2015 年 38 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校4年生の同一児童を対象に,全8時間からなる「組ずもう」の授業を6ヶ月の期間を置いて2度実施し,「身体への気づき」「攻撃的な感情の表出の抑制」及び「筋出力の制御力」の観点から効果の保持と積み重ねによる効果を検証した。その結果,1回目の授業で高まった「身体への気づき」「筋出力の制御力」及び「攻撃的な感情の表出の抑制」は,6ヶ月間保持されていた。また,再度,「組ずもう」の授業を実施することによって高まった技能の伸びが「身体への気づき」をより高め,相手の気もちへの認知を深いものにすると考えられた。さらに,相手の気もちへの深い認知は,相手への寛容を高め,「攻撃的な感情の表出」をより抑制させることが示唆された。
  • 鈴木 千春, 永田 智子, 藤原 夏美
    2015 年 38 巻 2 号 p. 13-22
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    小学校家庭科における玉結び・玉どめの指導は難しい。教師の技能不足に加え,教師と児童では動作の傾向が異なることなどから,ポイントを押さえた指導ができないためではないかと思われる。そこで本研究では,児童が誤りがちな動作に着目して,玉結び・玉どめの指導ポイントを明らかにするとともに,小学校教員養成課程の学生が指導ポイントを押さえた適切な指導言を学ぶ教材を開発した。さらに,この教材の効果を検証するため調査を行い,玉結び技能の下位群と上位群に分けて分析した。技能については,下位群は玉結びが顕著に上達し,上位群は技能が維持された。指導言については,下位群が上位群に比べ向上していく傾向にあり,特に玉どめの適切な指導言数の平均は下位群が上位群より有意に高い結果であった。このことから開発した教材は,下位群の学生に対して,特に玉結びの技能習得と玉どめの指導言の学びに有効であることが分かった。また教材の中でも「児童の誤り動作事例とつくり方を組み合わせた動画」が効果的であることが分かった。
  • 伊東 治己, 高田 智子, 松沢 伸二, 緑川 日出子
    2015 年 38 巻 2 号 p. 23-36
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    経済協力開発機構(OECD)が2000(平成12)年より3年ごとに実施している国際学習到達度調査(PISA)での好成績との関連で,フィンランドの学校教育が注目されるようになって既にかなりの年数が経過している。ただ,英語教育はPISA の対象から外れている関係で,さほどの注目は集めていないが,実はフィンランドは英語教育においても多大な成果をあげている。本稿では,フィンランドの英語教育の成功を支えている大きな要因のひとつと考えられる英語教科書に着目し,フィンランドの学校教育の要であるautonomy(自律性)の育成という観点からその特徴を明らかにするとともに,その分析結果に基づき,我が国の学校英語教育改革の方向性を提示する。
  • 「互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる」言語活動を中心として
    本山 和寿
    2015 年 38 巻 2 号 p. 37-46
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    日本では日本語を母語としない外国籍の子どもが増えており,日本語の学力差の厳しい学級では,実態に即した指導法を模索している。海外の日本人学校では以前から同様の課題を抱え,創意工夫を行ってきたが,子どもの実態は様々であり,指導法の蓄積は十分ではない。本論は日本人学校や国内の外国籍を持つ子どもが多く在籍する学校における授業研究の一助となるよう,厳しい日本語の学力差のある学級にも有効な授業づくりを提案すること目的とする。実際の授業では「互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる」言語活動を3つの過程に分け,子どもの授業以外での会話を観察することで,思考の内実を把握し,3つの過程における手立てを模索した。実践を通して子どもたちが急速に日本語を獲得したわけではないが,それぞれの手立ては有効であり,自分の考えを伝えたいという思いが新しい日本語の獲得に繋がるということが明らかになった。
  • 創発を生み出す授業の活性化を目指して
    吉村 直道, 山口 武志, 中原 忠男, 小山 正孝, 岡崎 正和, 加藤 久恵, 前田 一誠, 宮崎 理恵
    2015 年 38 巻 2 号 p. 47-56
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    創発は,創造や発明,発見以上に重要な面があるけれども,それらとの違いが明確でなく,とりわけ授業では捉えにくいものである。こうした状況を打開し,創発を生み出す授業を活性化するために,本稿では創発の捉え方を明確化することを目的とした。そのためにまず,先行研究を検討し,創発の特性を導き出し,それに基づいて創発の要件として(E1)創発の基本,(E2)創発の主体,(E3)創発の方法,(E4)創発された事柄,(E5)創発の新規性・価値性の5つを提起した。次いで,その要件に基づいて,既に創発と認められている事例と2つの算数科授業の事例を考察し,その適切性を例証するとともに,質の異なる4つの創発を同定した。さらにそれらに基づいて,創発の主体と創発の事柄に着目して,創発が4つのタイプに類型化できることを提起した。最後に,本稿の「創発の特性」「創発の要件」「創発の類型」を合わせて,「創発の捉え方」とすることを示した。
  • その史的意義と今日的意義
    長谷川 諒
    2015 年 38 巻 2 号 p. 57-68
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本稿は,美的教育思想の体系的論述で知られるベネット・リーマーが1967年に作成した,一般音楽のためのカリキュラムである Development and Trial in a Junior and Senior High School of a Two-year Curriculum in General Music に着目し,そのカリキュラムの構造的特質に言及するものである。本カリキュラムは,必ずしも音楽を専門的に学んでいない生徒の「美的感受性」を涵養することを目的に,リスニングに特化したシステムを採用している。様々な音楽的アイディアを体感するための歌唱行為,創作行為は行われ得るが,それらはあくまでリスニングの補助として存在しているのである。リーマーが,音楽作品の構造的特徴を分析的に聴き取る能力を徹底して育もうとしていることがわかるだろう。そして,このようなリスニングへの固執は,音楽の構造が有する緊張感や安堵感,焦燥感などが,人間感情のそれと同様の性質を有するがために音楽を学ぶべきであるとするリーマーの美学に帰結する。本カリキュラムは,一貫した美学的論拠が通底させている点で,史的に特筆されるものであった。
  • ステップの習得とその過程に着目して
    高田 康史
    2015 年 38 巻 2 号 p. 69-80
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,先行研究の予備実践(高田ら,2013)を元に学習内容を改変し,現代的なリズムのダンスの新たな単元計画を作成した。その実践を検証することにより,現代的なリズムのダンスの学習内容に関する再検討を行う。具体的には,以下の3点を課題とする。①本実践と予備実践における生徒のステップ習得成果を比較する,②ステップ習得過程での生徒のつまずきの内実を把握する,③本実践と予備実践の即興的パフォーマンスの成果を比較する。検証結果から,本実践におけるステップ習得成果は,定型の運動習得学習のみで構成された予備実践と同等のステップの習得成果を示した。また,本実践の単元計画は,予備実践よりも,学習指導要領の技能目標を高いレベルで捉えた実践であったといえる。ステップによって,習得過程のつまずきの特徴は異なり動きの習得が難しいステップ,動作と音の同期が難しいステップが存在することが明らかとなった。
  • 「外国語活動指導法」での指導内容を検討するために
    松宮 奈賀子, 森田 愛子
    2015 年 38 巻 2 号 p. 81-90
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,小学校教員養成課程における「外国語活動指導法」に関する科目において,特に留意して指導すべき事項を学生の実態から検討することを目的とする。小学校教員を目指す学生の「外国語活動指導者イメージ」を探るため,107名の学生を対象に自由記述による質問紙調査を行った。その結果,学生の中には学級担任の役割を「通訳」や「助手」と捉えている者がいることや,指導者は「正しい発音」ができる必要があると感じている学生が多いことが明らかになった。しかしながら,学習指導要領では授業を計画し,実際に授業を行うのは学級担任であると示されており,また世界中で英語が用いられる今日,英語母語話者のような発音はさほど重視されていない現状がある。すなわち,学生の持つ「外国語活動指導者イメージ」と現実に指導者に求められると考えられる力には乖離が見られる部分があり,指導において,これらの点に特に留意する必要があると考える。
  • キャッチングレシーブとホールディングトスを用いることの有効性
    塙 佐敏
    2015 年 38 巻 2 号 p. 91-102
    発行日: 2015年
    公開日: 2020/01/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ソフトバレーボールにおいて,連係プレーの成立と型に応じた技能の基礎を習得するために,キャッチングレシーブとホールディングトスを用いることの有効性を明らかにすることである。対象は5年生で,ゲームは3人制で行った。その結果,レシーバーはキャッチングレシーブしたボールをセッター頭上にパスを送ることができるようになるとともに,セッターはホールディングトスによって安定したトスを上げることができるようになった。そのため,アタッカーのアタック成功率が80%を超えていた。このことは,キャッチングレシーブとホールディングトスにより,自陣コート内で安定したボール操作ができ,組み立てが崩れることがないことからできたものである。また,ボール操作の制限を緩和したことは,連係プレーによる攻撃の組み立てだけでなく,型に応じた技能の基礎やその準備動作習得のために有効な方法であった。
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