日本教科教育学会誌
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明治初期教科書『本朝文範』における「普通文」への歩み
―〝 旨趣の標〟の近世古典注釈からの継承と近代教科書としての加工 ―
信木 伸一
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2016 年 39 巻 2 号 p. 25-35

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抄録
明治初期教科書『本朝文範』の〝旨趣の標〟は,「普通文」をめぐる言語的格闘の中で,その創出に向かう文章学的な試みであったと考えられる。1.『 本朝文範』の〝旨趣の標〟は,近世注釈書『源氏物語評釈』の「眼目の語」を基盤として作られた。『評釈』の標が,どのような場面として読むのかを提示しているのに対して,『本朝文範』の標は,表現の要語に注目させるものである。2. 近代和文教科書における〝旨趣の標〟には,『日用文鑑』のように段落の要旨を示すものと,『本朝文範』のように文章のテーマに即した中心となる概念を示して読みの技法を教えると共に文種に即した表現上の要語を示すものとがある。3.『 本朝文範』の「◎」の標は,文種の特徴を踏まえたもので,その文章を面白く巧みなものにしている効果的な表現に付けられている。4. 後の作文教科書に,表現の技法を教える『本朝文範』の〝旨趣の標〟を受け継いだものがある。
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