本研究は,QUILT フレームワークに基づく理科固有の発問フレームワークに依拠した理科授業を実践することにした。認知的葛藤を生起させるための“Puzzling picture”と議論を構築させるための“Think-Pair-Share”とを活用した。より効果的な“Puzzling picture”の活用に向けて,発散的発問から始め,不可解な絵を活用しながら科学的知識へと導くための収束的発問に至る教授方略を導入することによる効果を明らかにすることを目的とした。なお,科学概念の定着度や理解度を手がかりとした量的分析に加え,質的分析の観点から分析を行うことにした。そのために,単元「物質の状態変化」において,中学校第1学年の生徒138名を対象とした理科授業を実践した。質問紙調査,ワークシートに見られる記述内容から量的分析を行ったり,授業の様子を記録したIC レコーダーの記録内容から質的分析を行ったりした。その結果,以下の3点が明らかとなった。(1)他者との交流を踏まえて記述するThink-Pair-Share ワークシートは,観察・実験結果や,結果の理由を記述しやすくなる傾向がみられること。(2)科学概念の獲得の観点で,学習者の学習効果を高められ,1か月後にもその傾向が見られること。(3)発問フレームワークが上手く機能し,発散的発問で出された多くの意見が,収束的発問で活発な意見交換へと繋がっていく様子が見出されたこと。
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