2023 年 45 巻 4 号 p. 23-36
平成29年小学校および中学校の学習指導要領改訂に伴って創設された「特別の教科 道徳」では,多様な教材の開発が求められ,スポーツを題材として活用することも示されている。国際オリンピック委員会(IOC)による,Olympic Values Education Programme(OVEP)は,道徳的価値を学ぶことを目的として作成され,オリンピックの価値には,「特別の教科 道徳」の学習内容にかかわるものが多く含まれる。本研究ではOVEP 日本版の「フェアプレー」を中学校1年生の道徳に導入して授業を行い,授業を通して生徒が価値意識を変容させるかどうかを明らかにすることで,道徳科教材としての可能性を探ることを目的とした。さらに授業の評価を受けて,教材の修正について検討した。その結果,以下のことが明らかとなった。
1 )授業を通して,生徒の「フェアプレー」,「敬意・尊重」に関する価値意識が肯定的に変容し, 生徒はこれらの価値に関する考えを深めることができた。
2 )指導計画は,映像や画像などを提示して生徒が教材をイメージしやすいようにすること, グループワークの機会を増やすこと,学んだことを日常生活につなげられるようなまとめの方法を工夫することなど,学習指導に関する修正を行うことでより良いものになる。
3 )OVEP を元にした授業計画を道徳科の授業に導入することによる成果を示し,道徳科にお ける多様な教材の開発として,オリンピック教育教材を活用できる。