日本教科教育学会誌
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理科における観察・実験の場の構成(VI) : 時系列提示と並列提示における同一性・差違性の認知
松本 勝信
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1980 年 5 巻 4 号 p. 189-194

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抄録

前報では,観察・実験活動における即物的な関係づけ・意味づけの基盤となる同一性・差違性認知の実態を時系列提示場面を用意して明らかにしようとした。本報では,前報と対比させた並列提示場面を用意し,そこにおける同一性・差違性認知の実態と両者の比較分析の結果について述べた。男子学生10人を学習者とし,指標として用いた5変量の測定方法・分析方法は前回と全く同一である。その結果本実験からは以下のことが指摘できた。(1)閉眼安静時,光刺激受容時および同一性・差違性認知時のそれぞれの場面における脳波と脈波の変化はそれぞれの場面で独自のものである。(2)閉眼安静時には脳波の変化と脈波の変化に共通性が認められるが,光刺激受容時,同一性認知時および差違性認知時には脳波の変化と脈波の変化はそれぞれ独自性を示す。(3)脳波と脈波の変化のしかたは同一性認知時と差違性認知時とて強い共通性を示すものの全く同一とは言えない。そして前報との比較においては,(4)時系列提示場面と並列提示場面のそれぞれの場面における同一性認知と差違性認知間には類似性が認められるが,(5)同一性認知においても差違性認知においても時系列提示場面と並列提示場面間では脳波と脈波の変化がそれぞれ独自性を示すという共通性以外類似性は認められない。

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© 1980 日本教科教育学会
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