抄録
琉球列島、石垣島の礁原部において魚類及びサンゴ群集をトランセクト法により調査し、1998年夏に起こった大規模なサンゴ白化直後のこれらの変化を明らかにした。1998年7月以前はトランセクト上の基質はほとんどが生きたミドリイシ類だったが、1998年9月下旬までに生きたサンゴはほとんどみられなくなり、10月下旬までに死んだサンゴの骨格は糸状藻類で覆われた。サンゴ白化が起こった1ヶ月後の魚類群集全体についてみてみると、1トランセクト当たりの個体数、出現種数とも変化はなかったが、種多様性指数は減少した。魚類を食性グループに分けてみてみると、雑食性魚類、肉食性魚類の個体数はサンゴ白化前後で変わらなかったが、サンゴポリプ食性魚類の個体数は減少した。これとは対照的に、藻食性魚類、特にニザダイ類2種の個体数はサンゴ白化の1ヶ月後に増加した。サンゴ白化後の藻食性魚類、サンゴポリプ食性魚類の個体数の増減は底質の変化の違いに関係するものと思われる。ニザダイ類2種は藻類のバイオマスの増加に伴って周辺部から礁原部へと移動してきたものと推察される。