日本作物学会紀事
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カンショの塊根の肥大と形状の成立要因
―塊根肥大初期の灌水処理の影響―
佐々木 修津曲 雄治西原 英典下田代 智英
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2004 年 73 巻 2 号 p. 197-203

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抄録

本研究ではカンショの塊根の肥大初期における灌水処理の有無が, その後の塊根の形状に及ぼす影響について検討を行った. 葉重, 茎重, 塊根重はいずれの時期についても, 処理間の差は認められなかった. 塊根数, 塊根長は挿苗後70日にはすでに決定しており, 塊根数に処理間差は認められなかったものの, 塊根長は無灌水区が若干勝っていた. 挿苗後70日以降, 塊根幅は生育の進行とともに増大したが, その速度は若干灌水区で勝っていた. 塊根長と塊根幅の間には高い正の相関が認められ, 塊根が長くなるほど肥大速度は大きく, その程度は無灌水区より灌水区が著しかった. 肥大初期では長い塊根ほど幅長比は小さかったが, 生育が進むにつれてその差は縮小し, 挿苗後150日ではほぼ同じ幅長比となった. この場合, 灌水区, 無灌水区の幅長比はそれぞれ0.30, 0.23で, 無灌水区が若干細長い形状となった. 茎葉重は両処理区とも挿苗後70日の塊根数および総塊根長(個体に形成された塊根の長さの総和)と高い正の相関が認められたことから, 生育初期の茎葉の発達程度が塊根数とその長さの決定に何らかの影響を及ぼしているのではないかと推察された. 一方, 塊根数, 総塊根長, 塊根重相互の間には処理区あるいは生育時期を問わず高い正の相関が認められた. このことは塊根化する数が多いほどその個体の総塊根長が大きくなることを意味しており, 総塊根長が大きな塊根ほど個体の塊根収量は大きくなることが推察された. 挿苗後70日では紡錘形, 長紡錘形の塊根がそれぞれ35%, 65%を占め処理の差は小さかったが, その後の傾向は処理間で著しく異なり, 挿苗後150日の灌水区では長紡錘形の塊根のほとんどが紡錘形に移行したのに対し, 無灌水区では長紡錘形のままの塊根割合が高い傾向を示した. この差が生じた主な原因としては, 灌水区の塊根の肥大速度が無灌水区に比較して高かったことが考えられた.

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© 2004 日本作物学会
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