日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
イネ穎花の穂上位置の違いと冷水温感受性
寺井 謙次眞崎 聡川本 朋彦松本 眞一小玉 郁子杉浦 正典
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2004 年 73 巻 2 号 p. 204-211

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抄録
耐冷性の異なる12品種を用いて, 1穂内穂軸節位別の稔・不稔籾の着粒状況, 粒重, さらに穂型に対する冷水温環境(昼夜連続19℃)の影響を調査した. 各品種とも, 穂軸節位別の不稔籾を含む着生籾は, 1次枝梗において節位間変異は小さいが, 2次枝梗では穂の中位に最大値をもつことにより, 穂型は中位優勢型を示した. しかし稔実籾の穂型は, 耐冷性の強い品種群ほど中位優勢型を維持し, 各穂軸節位の稔実籾数も耐冷性の小さい品種群より高い値を示した. 玄米1粒重の穂軸節位間変異は, 各品種とも1次枝梗より2次枝梗で大きかった. また, 耐冷性の強い品種群の2次枝梗では, 下位の節位ほど稔実歩合が高くなるが, 粒重が小さくなることによって, 節位別の稔実歩合と玄米1粒重との間では負の相関関係が示された. 耐冷性の強い品種群において, 1穂内の稔実歩合は, 下位, 中位, 上位の順で高く, また分枝の次元に着目した穂の分枝構造上では, 3次分枝籾, 2次分枝籾, 1次分枝籾の順で高くなった. しかし, 耐冷性の弱い品種群ではこの傾向が不明瞭であった. 2次枝梗で強かった稔実歩合と粒重との間の負の相関関係において, 茎葉からの輸送物質をめぐる穎果間の競合関係の関与の有無は, 今後の課題として残された.
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© 2004 日本作物学会
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