日本作物学会紀事
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栽培
岩手県地方における秋播性コムギ冬期播種栽培の播種適期と最適播種量
荻内 謙吾高橋 昭喜作山 一夫
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2004 年 73 巻 4 号 p. 396-401

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抄録
岩手県におけるコムギ秋播栽培において,水稲などの前作物との秋作業の競合を解消するため,秋播性コムギを根雪前に播種する冬期播種栽培について検討し,最適な播種期と最適な播種量を明らかにした.秋播性品種「ナンブコムギ」を用い,2000年から2002年の10月上旬から11月上旬に播種期を旬ごとに変えて出芽までの日数を調べたところ,播種後の 0℃以上の積算平均気温が 95~115℃になった時点で出芽した.このため,播種が早くて播種日から根雪始めまでの積算平均気温が95℃より高いと根雪前や雪中で出芽し,凍上害の危険が高くなった.逆に,12月上旬から12月下旬のように播種が遅く越冬後に出芽する場合では,出芽個体率が高く,正常に出穂,成熟した.このことから,冬期播種栽培の岩手県における播種適期は,根雪前や雪中で出芽することのない 12月上旬から12月下旬とすることが適当と考えられた.冬期播種栽培は,10月上旬播種の慣行秋播栽培と比較して地上部の生育量は小さくなるものの,穂数は多く,倒伏が少なく,子実収量は 379 g/m2 で慣行秋播栽培対比 95%となった.冬期播種栽培で得られた子実の外観品質は慣行秋播栽培とほぼ同等で,子実の粗タンパク質含有率は 14.4%と 1.4ポイント慣行秋播栽培のものよりも高まった.播種量を増やすと穂数は直線的に増加し,それに伴い子実収量も増加し,350粒/m2 前後で最大となった.
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© 2004 日本作物学会
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