抄録
水稲のホールクロップサイレージ向け特性として,登熟後期の茎部 (稈および葉鞘) におけるデンプンの再蓄積に着目した.成熟期に高い茎部デンプン含有率を得る上で求められる品種特性を明らかにすることを目的に,その品種・系統間差について各器官のシンク,ソース関係や登熟後期の同化産物の分配との関係として検討した.成熟期の茎部デンプン含有率は,日本型品種・系統で高く,半矮性インド型品種・系統では僅かであった.日本型品種・系統ではシンク,ソース各器官の量や子実シンク活性と成熟期デンプン含有率との間に相関関係が見られた.日本型品種・系統で総籾数ならびに登熟初中期の穂重増加量/籾/日と成熟期デンプン含有率の間にはそれぞれ負,正の有意な相関が見られ,総籾数が少ないほど,また,登熟期間前半に子実のシンク活性が高いほど,茎部でのデンプンの再蓄積が高かった.再蓄積シンクとしての茎については,再蓄積が開始する登熟中期に籾当たりの茎重が大きいほど,ソースとしての葉については,登熟中期から成熟期にかけて籾当たりの緑葉重が大きく,成熟期の籾当たりの枯死器官重が少ないほど成熟期デンプン含有率が高かった.以上,茎部での高いデンプン再蓄積を得るための日本型品種・系統の特性が子実シンク能,子実シンクサイズに対する茎,緑葉,枯死器官の量との関係から明らかになった.