日本作物学会紀事
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栽培
秋播性コムギの冬期播種栽培によるコムギ縞萎縮病の発病抑止効果
荻内 謙吾勝部 和則及川 一也岩舘 康哉
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2006 年 75 巻 3 号 p. 281-288

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抄録

土壌伝染性のウイルス病害で, 近年発生面積の拡大しているコムギ縞萎縮病は, コムギ播種後の気温が高く雨が多いと感染率が高まり被害が増大するが, 播種時期を遅くすると発病が軽減されることが知られている. そこで, 秋播性のコムギを根雪前に播種する冬期播種栽培が, コムギ縞萎縮病の発生に及ぼす影響をナンブコムギを用いて検討した. コムギ縞萎縮病の発生がみられる圃場において, 10月上中旬播種の秋播栽培標準播種区(標播区)と12月上中旬播種の冬期播種栽培区(冬期区)のコムギ縞萎縮病発病程度を比較したところ, 標播区は病徴のみられる株の割合で示す発病株率, 病徴の程度を示す発病度が冬期区よりも高く, 特に発病の多い多発圃場では発病株率が100%, 発病度も99と高かった. これに対し冬期区は, 発病株率0~5%, 発病度0~2と標播区に比べ有意に低かった. 標播区は播種後の日平均気温(地温)が高く, コムギ縞萎縮ウイルス(WYMV)の感染適温とされる日平均気温5°C(地温7°C)以上の日数が40日以上あった. 冬期区では播種から根雪期間終了後である3月下旬まで日平均気温5°C(地温7°C)以下の低温で経過していたことから, 冬期区で発病が抑止された要因としては, 播種後の低温条件によりWYMVのムギへの感染が妨げられた可能性が考えられた. 冬期区は, 標播区に比べ穂数が多く千粒重が重い傾向にあり, 発病程度の高い標播区に比べ最大で23~65%増収した.

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© 2006 日本作物学会
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