抄録
土壌の過湿や過乾燥の影響を受けやすい転換畑ダイズ作において, ロータリ爪の一部除去や付け替えにより播種条下を不耕起として, 耕耘した条間の土壌で種子を覆土する「有芯部分耕栽培」を適用し, 同栽培法が土壌水分や生育・収量に及ぼす影響について慣行の全層耕耘栽培と比較した. 有芯部分耕栽培における播種条下の不耕起土壌の三相分布は耕耘土壌と顕著な差を示し, 固相や液相の比率が高かった. また, 土壌乾燥時には全層耕耘した土壌よりも含水率が高く維持されるとともに, 湿潤条件での同様の比較では有芯部分耕栽培の不耕起部の含水率が低い傾向を示し, 土壌水分の変動が小さいことが示された. 一方, 耕耘法の違いによりダイズ生育に差を生じ, 有芯部分耕栽培において開花期の主茎長や主茎節数の増大, 乾物重の増加が確認され, 着莢期~子実肥大期においても同様の傾向が継続して認められた. また, 収量に関しては, 有芯部分耕栽培により着莢数や百粒重が増大する傾向が示され, 子実重の有意な増加が認められた. なお, 子実成分に関する耕耘法間差は認められなかった. このような生育量の増大や収量の増加を生じた要因として, 有芯部分耕栽培では, 土壌含水率の変動が小さい不耕起土壌により土壌の過湿や過乾燥のダイズ生育への悪影響が緩和されることが考えられる. 土壌の透水性や土性と有芯部分耕の有効性との関係の解明や作業性の向上が今後の課題である.