日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
栽培
経済的立地限界の茶栽培
—幼茶樹による時期別化学肥料窒素の利用率とその向上対策—
付 杰奇長 真弓星野 幸一平井 英明加藤 秀正
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 77 巻 3 号 p. 306-314

詳細
抄録
本研究では茨城県奥久慈地方の大子町を念頭に降水量・気温が類似する宇都宮大学附属農場で幼茶樹のポット栽培試験を行い, 茨城県の施肥基準である年4回の化学肥料窒素の利用率を重窒素トレーサー法により調査した. その結果, 次の諸点が明らかとなった. 定植2年目の茶樹全体による夏肥, 秋肥, 春肥, 芽出肥の化学肥料窒素の利用率は, それぞれ, 20.3%, 36.5%, 40.8%, 46.4%であった. また, 茨城県施肥基準(慣行)区および夏肥と秋肥をそれぞれ多数回分施した(分施)区における年間の窒素利用率は, 慣行区が約28%, 分施区が約44%であった. この利用率は, この年の異常な寒害により冬から春にかけて成葉の大部分が落葉した試験であったため, 平年の気象であれば, この利用率はそれぞれ35%, 55%前後と推定された. 夏肥および秋肥の分施は主に栄養貯蔵器官である成葉, 茎, 根への化学肥料窒素の貯蔵を促進し, 生育量を向上させたと考えられた. したがって, 大子町の茶園土壌で二番茶期から秋肥にかけて可給態窒素が著しく低下することへの対応策としては, 夏肥・秋肥の多数回分施が有効と考えられた.
著者関連情報
© 2008 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top