抄録
近年の北部九州におけるコムギの子実タンパク質含有率の低下要因を明らかにするために,1993~2008年において同一条件で栽培されたコムギ品種「チクゴイズミ」の子実タンパク質含有率と気象および収量,収量構成要素との関係について検討した.子実タンパク質含有率と千粒重および収量との間に負の相関が認められ,子実タンパク質含有率は千粒重が重く,収量が多くなるほど低くなる傾向にあった.さらに,千粒重は登熟期間の降水量との間に負の,千粒重や収量は日照時間との間に正の相関関係が認められ,登熟期間の少降水および多日照の条件下で千粒重が重く,多日照で収量が多くなる傾向にあった.以上のことから,近年の北部九州産コムギにおける子実タンパク質含有率の低下要因は登熟期間における少降水および多日照によって,千粒重が重く,収量が多くなることによるものであると考えられた.